季節に合わせた花や緑の楽しみ方を紹介する、日比谷花壇の連載コラム「季節を彩る花物語」。
お家の中で花や緑を気軽に楽しむヒントを紹介したり、時には公園や路地裏に咲く花々を紹介してみたり、花や緑にまつわる歴史的な出来事から、海外での花の楽しみ方・贈り方まで、季節を感じ楽しめる花と緑の情報満載でお届けしていきます。
*このコラムは、中日新聞・東京新聞の隔週月曜夕刊で2009年1月から連載しています。
第92回 ラナンキュラス 〜バラに負けない存在感〜
花持ちのよいラナンキュラス
春の花の中でもひときわあでやかに花を咲かせるラナンキュラス。 長野県の生産者集団「フラワースピリット」は、「バラに勝る花を作りたい」という想いでラナンキュラス栽培をしています。 フラワースピリットのラナンキュラスは、確かにバラに勝るほどの高品質で、「消費者の方にとにかく良い花を届けたい」という信念と「すばらしい人、すばらしいもののそばにあって存在感のある花でありたい」という熱意のある真摯な生産姿勢が特に目立ちます。
ラナンキュラスの出荷は寒さ厳しい冬が最盛期。柔らかなラインの茎先にバラほどに美しい花を咲かせます。
日保ちは平均しても15日ほどで、長ければおよそ1ヶ月咲き続けることもあります。通常、切花の保ちは1週間ほどとして販売されているのに比べると驚異的ですが、この日保ちが確保され、人気が出たのはここ数年の話。
ラナンキュラスには、日中開花し、夜になると閉じ、それを繰り返しながら朽ちていく植性があります。同時にベントネック(切り花で、花を切った後に花首が萎れて花が垂れること)を起こしやすい性質もあるために、以前は開花せずにしおれてしまうことも少なくありませんでした。このベントネックを防ぐために植性をうまく利用し、現在では、一度咲かせて花首を固くした後に、出荷しています。こうしたことで、ほぼ100%の開花率となり、ようやく皆さんのもとへラナンキュラスの愛らしさが伝わるようになりました。
また、フラワースピリットではより一層の手間暇をかけることで、スーパーローヌ(巨大輪系)やローヌ(大輪系)など人の顔ほどの大きさになる品種を育てています。これまでの最大記録は18.5cmで、幾重にも重なる花弁が満開になった様子はもはやバラ顔負けです。
そんな魅力溢れるラナンキュラスを鑑賞できるのは毎年春だけのお楽しみです。 まるっとした蕾が次第に開花する生命力や、開花後一輪でも見ごたえある咲き姿、驚くほどの花保ちを今、春の陽気とともにぜひ楽しんでください。
日比谷花壇 マーチャンダイジングディレクター 長谷川藍生
コラムニスト紹介
店頭での経験を活かし、日比谷花壇の首都圏店舗の生花マーチャンダイジングを担当。お客様が求める、またお客様に新たな発見や感動を提供する商品展開を手掛ける。