季節に合わせた花や緑の楽しみ方を紹介する、日比谷花壇の連載コラム「季節を彩る花物語」

季節に合わせた花や緑の楽しみ方を紹介する、日比谷花壇の連載コラム「季節を彩る花物語」。
お家の中で花や緑を気軽に楽しむヒントを紹介したり、時には公園や路地裏に咲く花々を紹介してみたり、花や緑にまつわる歴史的な出来事から、海外での花の楽しみ方・贈り方まで、季節を感じ楽しめる花と緑の情報満載でお届けしていきます。
*このコラムは、中日新聞・東京新聞の隔週月曜夕刊で2009年1月から連載しています。

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第91回 桃の木 〜女性の体いたわる効能〜

ピンク色の可憐で愛らしい桃の花

ピンク色の可憐で愛らしい桃の花

五節句のうち、3月3日は「上巳(じょうし)の節句」、別名「桃の節句」と言われる女の子の成長をお祝いする日です。現代の3月3日はまだ桃が咲くには少し時期が早いですが、旧暦の3月3日はもう少し遅いのでちょうど桃が咲く季節だったようです。今日では、「上巳の節句」と言う名はほとんど忘れられ、「桃の節句」「雛祭り」の言葉が定着しています。柔らかな桃色の花びらを幾重にも重ね枝に連なって咲く花姿は、きれいな着物で着飾った女の子とイメージが重なります。桃は見て美しいだけでなく、女性にとってうれしい効能を持つ植物です。

「上巳の節句」が伝わった中国では、桃は邪気を祓う木と伝えられ、魔よけや厄払いに使われたり、桃の実は不老長寿の果実と考えられたりしていました。桃の果実には食物繊維、カリウム、ナイアシンなどが含まれ便秘改善、冷え性改善、高血圧予防、美肌などの効果があり、葉は乾燥させてお風呂に入れるとあせもや湿疹に効果があります。種は桃仁と言われる婦人病の漢方薬として使われ、つぼみは白桃花と言う利尿作用がある漢方薬として使われます。見て美しく、食べておいしい桃がこれほど女性にとってうれしい効能を持つ植物だったとは、梅や桜ではなく、桃の節句になったのも、桃が女性にとって大切な植物だからかもしれませんね。

白色やピンク色の可憐で愛らしい花をつける桃は、花桃(はなもも)と呼ばれ花を楽しむために改良された園芸品種です。実は生りますが、小さくおいしくないそうです。フラワーショップで花桃を買う時は、つぼみを注意して見てみましょう。つぼみが黒ずんでいるもの乾燥しているものは咲かないので、ふっくらとしたきれいなピンク色のものを選びましょう。
家で飾る時は、水の中で茎を切る「水切り」か、茎に割りを入れて(縦や十字に深く切れ込みを入れる)、花瓶に多めの水を入れていけると長持ちします。チューリップやスイートピー、菜の花などの春の花といっしょに飾ると、さらに華やかな雛祭りを演出できます。

日比谷花壇 シニアデザイナー 西澤真実子

 コラムニスト紹介

西澤真実子
日比谷花壇 シニアデザイナー 西澤真実子
ギフト商品デザインのコアを担うトップデザイナーのひとり。シンプルかつ花材の繊細な色合いにこだわったデザインを得意とする。また最近では、書籍やCDジャケット撮影の作品を手掛けるなど、活動の幅を広げている。