季節に合わせた花や緑の楽しみ方を紹介する、日比谷花壇の連載コラム「季節を彩る花物語」

季節に合わせた花や緑の楽しみ方を紹介する、日比谷花壇の連載コラム「季節を彩る花物語」。
お家の中で花や緑を気軽に楽しむヒントを紹介したり、時には公園や路地裏に咲く花々を紹介してみたり、花や緑にまつわる歴史的な出来事から、海外での花の楽しみ方・贈り方まで、季節を感じ楽しめる花と緑の情報満載でお届けしていきます。
*このコラムは、中日新聞・東京新聞の隔週月曜夕刊で2009年1月から連載しています。

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第83回 秋の花あしらい 〜葉や実もの添え多彩に〜

ブラウン系のアイビー、シルバー系のダスティミラーのほか、実ものを合わせて、秋の花あしらいに。

ブラウン系のアイビー、シルバー系のダスティミラーのほか、実ものを合わせて、秋の花あしらいに。

季節にはそれぞれイメージする色があります。春は桜のピンク、夏は海の青、冬は雪の白・・・。秋は何色でしょう。紅葉の深い赤や黄色、たわわに実る田んぼの黄金色。枝や葉をぐんぐんと伸ばす夏から、花が咲き、実をつける成熟の秋へ、植物はドラマチックに変化していきます。

秋の花あしらいは、葉の色も楽しみたいですね。フローリストはアレンジメントに使う葉のことを「葉もの」または「グリーン」と呼びます。

秋は緑色の「葉もの」ではなく、ブラウンやボルドー、シルバーなどの色目を選ぶと、ぐっと季節感が出てきます。ブラウンやシルバーの葉というとあまりピンとこないかもしれませんが、ブラウン系ではヒューケラやアイビー、シルバー系ではユーカリ、ダスティミラーなど、緑色の葉とは、かなり印象が異なります。

色だけでなく質感もいろいろ、絞り染めのような凹凸があるもの、スエードやベルベットのような温かそうな手触りものなど、合わせる葉ものを変えるだけで、秋らしい深みのある仕上がりになります。

実ものや果物、カボチャなどの野菜をあわせてみるのも、秋ならではの楽しみ方です。実ものの美しさは、赤やオレンジといった単調な色彩ではないところです。オレンジから深い赤へ、ブルーからパープルへと、筆で繊細に着色されたのではないかと思うほどのグラデーションを描いたり、メタリックパープルとブラックが混ざり合ったような自然が作り出したと思えない色を持つ実があったりと、宝石にも負けない美しさです。

リンゴやカボチャをアレンジメントに使うときは、大きさにあわせてワイヤーや竹串、割り箸で茎を作ります。固い軸をずらして後ろからワイヤーなどを挿し、そのまま他の花と一緒に花束にまとめたり、吸水フォームに挿したりします。数日間、目で楽しんだ後は、おいしく頂けるところもいいところです。

葉ものや実ものは、花を引き立てる脇役で、小さく目立たない存在ですが、身のまわりで色づき始めている葉や実ものに足をとめて、ちょっと観察してみてはいかがでしょうか。今まで気が付かなかった秋の色を見つけられるかもしれません。

日比谷花壇 シニアデザイナー 西澤 真実子

 コラムニスト紹介

西澤 真実子
日比谷花壇 シニアデザイナー 西澤 真実子
ギフト商品デザインのコアを担うトップデザイナーのひとり。シンプルかつ花材の繊細な色合いにこだわったデザインを得意とする。また最近では、書籍やCDジャケット撮影の作品を手掛けるなど、活動の幅を広げている。