季節に合わせた花や緑の楽しみ方を紹介する、日比谷花壇の連載コラム「季節を彩る花物語」

季節に合わせた花や緑の楽しみ方を紹介する、日比谷花壇の連載コラム「季節を彩る花物語」。
お家の中で花や緑を気軽に楽しむヒントを紹介したり、時には公園や路地裏に咲く花々を紹介してみたり、花や緑にまつわる歴史的な出来事から、海外での花の楽しみ方・贈り方まで、季節を感じ楽しめる花と緑の情報満載でお届けしていきます。
*このコラムは、中日新聞・東京新聞の隔週月曜夕刊で2009年1月から連載しています。

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第74回 アジサイ 〜多彩な色、初夏の風物詩〜

ギフトにも人気の八重咲きのアジサイ

ギフトにも人気の八重咲きのアジサイ

日本の梅雨時、初夏の風物詩で頭に思い浮かぶのが、道端や公園などに色とりどりに咲き誇る“アジサイ”です。学名のハイドランジアとは“水の容器”の意味で、やはり水がとても似合う花です。
アジサイの花には雨粒がよく似合うのも頷けます。

路地や公園によく見るアジサイの多くは、日本原産のガクアジサイを品種改良したセイヨウアジサイと呼ばれるものです。
ちまたでは“土壌が酸性なら青い花、アルカリ性では赤い花”と言われますが、これは花色が決まる要因の一つでしかないようです。他の要因としては元の花弁に含まれる補助色素の色によって、赤にしかならなかったり、青にはなり得なかったり、なり難かったりするようです。ほかにも様々な要因が重なって、あれほど多彩な色で毎年私たちの目を楽しませてくれているのです。

現在、フラワーショップに並んでいる様々な品種のアジサイは、鉢植えのまま育てたほうが色が変わりにくく夏越しも簡単にできます。

毎年、新しい品種が作り出され、フローリストである私たちも5月に入ると、今まで見たことがない新しいアジサイの花に出会えるのがとても楽しみです。

アジサイは江戸中期まではあまり盛んに楽しまれてはいなかったようです。 “七変化”とも言われるように花色の移ろう姿が潔しとされず、当時の日本人の好みには合わなかったようです。江戸後期になると、初夏に咲く花が少ないこともあり、次第に受け入れられるようになってきました。

とても“和”なイメージの強いアジサイですが、近頃、庭先で立派に咲いているのをよく見かける、葉が柏の形をしているカシワバアジサイの原産地は北米です。

初夏から秋まで様々な色に変化しながら咲き続けるカメレオンアジサイや、セイヨウアジサイとは違う可憐さが魅力なヤマアジサイなど色も形も違う鉢植えがたくさん店頭には並びます。

庭できれいに咲いた枝を一折してガラスの花瓶に活けてあげると、燐とした姿が素敵です。また、夏になると、フラワーショップには、味わいのある色合いが魅力の切花の秋色アジサイも顔を出し始めます。様々なアジサイの魅力をこの初夏は探してみませんか。 

日比谷花壇 マーチャンダイジングディレクター 谷 真由美

 コラムニスト紹介

谷 真由美
生花マーチャンダイジングディレクター 谷 真由美
店頭販売での長年の経験を活かし、日比谷花壇の首都圏店舗を統括する鉢物マーチャンダイジングディレクターとして活躍。花鉢や観葉植物の魅力を熟知し、お客様が求める、お客様に発見や感動を提供する商品展開を手掛ける。