季節に合わせた花や緑の楽しみ方を紹介する、日比谷花壇の連載コラム「季節を彩る花物語」。
お家の中で花や緑を気軽に楽しむヒントを紹介したり、時には公園や路地裏に咲く花々を紹介してみたり、花や緑にまつわる歴史的な出来事から、海外での花の楽しみ方・贈り方まで、季節を感じ楽しめる花と緑の情報満載でお届けしていきます。
*このコラムは、中日新聞・東京新聞の隔週月曜夕刊で2009年1月から連載しています。
第20回 シクラメン 〜大切な方へ一年の感謝を込めて〜
マーブル模様の丸い花びらが可憐で魅力的なミニシクラメン「マーブルキャンディ」
最近は朝晩の冷え込みが増し、暖かい上着が恋しく感じる日が多くなりました。
この時期、花屋の店頭は色とりどりのシクラメンが出回り始め、通りを行き交う人々の心を暖めるかのように、鮮やかに咲き誇っています。
寒さに比較的耐える性質を持つシクラメンは、日本の冬を彩る「花鉢の王様」の風格があります。上へ立ち昇るかのように反り返った花びらと、ハート型をした葉との独特の花姿はシクラメンならではであり、和名の「篝火花(カガリビバナ)」はこの花びらの特徴をそのまま名付けたものと言えるでしょう。花色は、ローズピンク色の「ミユキローズ」や花びらのふちがフリンジ状の「ビクトリア」や「ディープレッド」、絞り咲きが珍しい「マーブルキャンディ」・・・等々。色や咲き方のバリエーションは大変豊富でその種類も年々増え続けており、毎年冬には新しいシクラメンに必ず出会う事ができます。
また近年人気のもので、ヨーロッパや地中海沿岸に自生する原種に近い「ガーデンシクラメン」も愛らしく、小ぶりで可愛いものです。霜害のない地域の戸外では、寒さに強いこの「ガーデンシクラメン」は日当たりの良い花壇やコンテナに向いていますので、冬でもお庭や玄関先でシクラメンを楽しむ事ができます。
従来のシクラメンも、ガーデンシクラメンも、春先まで次々に咲く花を楽しむ秘訣は、購入時の鉢の選択にあります。「シクラメンは葉の数だけ花芽がある」といいますので、葉がこんもりとしっかり茂っているもの、葉の形が整い締まって見える株を選ぶと良いでしょう。
購入後のお手入れは、従来のシクラメンでしたら15〜20度の室温で明るく日光が当たる環境で管理し、水遣りは塊茎という中央部に、直接水がかからないように鉢のふちに沿って土に静かに与えるようにします。ガーデンシクラメンは更に丈夫な性質なのでもっと気軽に楽しむ事ができます。
咲き終わった花は根元からひねって引き抜きますと、次から咲く花へ栄養が行き届きます。ときどき液肥を与えると花芽の付が良くなり、より長く花を楽しめることでしょう。
一年の感謝を込めて大切な方へ贈るお歳暮に、根強い人気があるシクラメン。
今年の冬は色鮮やかなシクラメンの花に心を込めて、大切な方の心を暖めてみませんか。
コラムニスト紹介
約20年にわたり、日比谷花壇の店舗でフラワーコーディネーターとして活躍。 様々な花や緑の魅力を熟知し、お客様が求める商品を案内するとともに、花に託して贈るお客様の“気持ち”や“ご意向”をくみ取り、最適な提案を行う、花のコンシェルジュ。 花がもたらす喜びや感動をお客様と共有し、花を贈る人、贈られる人に期待以上の満足を得ていただきたいと、「ヒビヤカダン 日比谷公園店」でお客様をお迎えしている。