季節に合わせた花や緑の楽しみ方を紹介する、日比谷花壇の連載コラム「季節を彩る花物語」。
お家の中で花や緑を気軽に楽しむヒントを紹介したり、時には公園や路地裏に咲く花々を紹介してみたり、花や緑にまつわる歴史的な出来事から、海外での花の楽しみ方・贈り方まで、季節を感じ楽しめる花と緑の情報満載でお届けしていきます。
*このコラムは、中日新聞・東京新聞の隔週月曜夕刊で2009年1月から連載しています。
第19回 花の香り〜相手の心に届く贈り物〜
香りのよいバラ‘ザ・テレサ’に、チョコレートコスモスと松虫草をあしらった、秋の雰囲気を演出するコーディネイト
どこからともなく漂う金木犀の香りによって秋の訪れを実感すると共に、心の安らぎを覚えます。毎年のこの花の匂いを嗅ぐと、私は幼少期の頃に金木犀の花を拾い集めて母と遊んだ、懐かしい思い出が一瞬にしてよみがえり、とても優しい気持ちになります。
このように、ある特定の匂いがそれにまつわる記憶を呼び覚ます経験は皆さんもお持ちではないでしょうか。
花屋さんで取り扱う花にも様々な香りがあります。せっかく大切な人に花を贈るならば、相手の方の記憶に留めるように笑顔と一緒に「香り」に思いを込めて贈るのも素敵ですね。
例えば香り高い花として人気の「バラ」は品種によって香りも様々です。ピンク色の「イヴピアッツェ」などは艶やかな香り、オレンジ色の「マレーラ」などは甘くフルーティーな香り、「ブルームーン」などパープル系のバラの多くは高貴で大人の香りがします。
バラの香りには鎮静効果やリラックス効果などがありますから、印象的な香りと共にそのような効果を狙って相手の方に自分の好きな香りを贈るのも良いでしょう。バラ以外にも、ユリ・ジャスミン・ボロニア・ルクリア等、良い芳香の花はたくさんありますので、花屋さんで確認してみてはいかがでしょうか。
ただし、香りは人によって好みが違うものですから、注意が必要な事もあります。代表的な例では「お見舞い」。一日も早く元気になって欲しいという思いを込めて花を贈るのですが、元気なときは好きな香りであっても、気力が萎えていたり体調が優れなかったりするときにはその香りも苦痛に感じる事もあります。また他の例では、お食事のテーブル花や飲食店へ花を贈る際にも、美味しい食事の味を邪魔しないように配慮する事も大切です。これらの場合、殆ど香りを感じない花か、せめて穏やかな香りの花を選ぶのが一般的です。
こういった香りのマナーを踏まえ、素敵な花の香りで相手の方の心に届く贈り物をしてみるのはいかがでしょうか。コラムニスト紹介
約20年にわたり、日比谷花壇の店舗でフラワーコーディネーターとして活躍。 様々な花や緑の魅力を熟知し、お客様が求める商品を案内するとともに、花に託して贈るお客様の“気持ち”や“ご意向”をくみ取り、最適な提案を行う、花のコンシェルジュ。 花がもたらす喜びや感動をお客様と共有し、花を贈る人、贈られる人に期待以上の満足を得ていただきたいと、「ヒビヤカダン 日比谷公園店」でお客様をお迎えしている。