季節に合わせた花や緑の楽しみ方を紹介する、日比谷花壇の連載コラム「季節を彩る花物語」

季節に合わせた花や緑の楽しみ方を紹介する、日比谷花壇の連載コラム「季節を彩る花物語」。
お家の中で花や緑を気軽に楽しむヒントを紹介したり、時には公園や路地裏に咲く花々を紹介してみたり、花や緑にまつわる歴史的な出来事から、海外での花の楽しみ方・贈り方まで、季節を感じ楽しめる花と緑の情報満載でお届けしていきます。
*このコラムは、中日新聞・東京新聞の隔週月曜夕刊で2009年1月から連載しています。

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第105回 ケイトウ 〜独特の風貌で秋を彩る〜

赤いベルベットのようなケイトウを取り入れた、秋らしいアレンジメント

赤いベルベットのようなケイトウを取り入れた、秋らしいアレンジメント

 暑い夏を懐かしく感じるようになった頃。

 風そよぐ穏やかな秋に、艶めくベルベットのように暖かみのある花をつけるケイトウ。咲く姿が鶏冠に見えることから、鶏頭(ケイトウ)という呼び名がついています。

 一年草であるケイトウは、毎年春ごろから種が蒔かれ、厳しい暑さを乗り越えて1メートルほどに成長します。茎は、勢い良く水を吸収しているかのような筋をもち、暑さに挫けることなく真っ直ぐ立ち、花を支えます。花は赤、オレンジ、黄、ピンク、緑と鮮烈な色で咲き、特に赤は、まるで威勢良く首を立てて鳴く鶏の鶏冠。

 そんなケイトウは季節を問わず愛されるバラやガーベラとは違う、独特の風貌で、人々に秋を知らせます。

 鶏冠を思わせるケイトウは「トサカケイトウ」や「ボンベイケイトウ」などと呼ばれる種類のもので扇形をしています。他にも、手をぐっと握ったような丸い姿の久留米ケイトウ、鶏の尻尾のような羽毛ケイトウや、小さな尖りがたくさんついたセロシア(ノゲイトウ)、そして紐状に密集して咲くアマランサス(ヒモゲイトウ)などの種類があります。同じケイトウでも、それぞれ違う見応えがあるので、飾りたいシーンに合わせていろいろな生け方を楽しめます。

 そして、秋の草花などと共に生けてあげると、たっぷりの秋を楽しむことが出来ます。

 秋は、ススキやコスモス、シュウメイギクなど風に揺られる姿を美しく思うものが多くあります。芯の通った茎を持つケイトウとは素材が違い過ぎて、一緒に楽しむことが避けられがちですが、花を飾るとき、対照的な花材を一緒に生けるのも一つの技。背高くゆらゆらとしたススキやコスモスの立ち姿に合わせて、幾本かを寄り添わせたケイトウを生けると、お互いが引き立ち、秋の芸を感じます。

 ケイトウが市場に出回るのは十一月頃まで。ぜひこの時季に秋をご堪能ください。

日比谷花壇 マーチャンダイジングディレクター 長谷川藍生

 コラムニスト紹介

長谷川藍生
長谷川藍生
店頭での経験を活かし、日比谷花壇の首都圏店舗の生花マーチャンダイジングを担当。お客様が求める、またお客様に新たな発見や感動を提供する商品展開を手掛ける。