季節に合わせた花や緑の楽しみ方を紹介する、日比谷花壇の連載コラム「季節を彩る花物語」

季節に合わせた花や緑の楽しみ方を紹介する、日比谷花壇の連載コラム「季節を彩る花物語」。
お家の中で花や緑を気軽に楽しむヒントを紹介したり、時には公園や路地裏に咲く花々を紹介してみたり、花や緑にまつわる歴史的な出来事から、海外での花の楽しみ方・贈り方まで、季節を感じ楽しめる花と緑の情報満載でお届けしていきます。
*このコラムは、中日新聞・東京新聞の隔週月曜夕刊で2009年1月から連載しています。

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第103回 朝顔 〜江戸時代にはブームも〜

白やピンクの変化朝顔

白やピンクの変化朝顔

夏の風物詩、朝顔。朝の日差しを受けて、青やピンクの花を咲かせる様子を見ると、小学生の頃、夏休みの宿題で朝顔を育て、観察日記をつけたことを思い出します。

黒く小さな種を撒いて水遣りをし、早く芽が出ないかなと毎日植木鉢の中を覗きこんでいました。ある日とうとう小さな芽が出てきているのを見つけたときの喜び。そして、次々と葉を広げ支柱にツルを巻きつけ、つぼみから丸いラッパのようなかわいらしい花を咲かせたこと。自分で撒いた種を途中で枯らさずにちゃんと育てられたことがうれしくて、子供ながらに感動したことを覚えています。

最近では、グリーンカーテンとして使われている家をよく見かけます。窓一面に花を咲かせる様子は、まるで緑のキャンバスに朝顔の絵を描いているようにも見え、一瞬、暑さを忘れられる美しさです。

日本に朝顔が伝えられたのは、奈良時代の終わり頃、遣唐使が種を薬として持ち帰ったと言われています。その頃の花色は、青色だったと伝えられています。今のようにカラフルな花色が見られるようになったのは、江戸時代に入ってからのことです。品種改良が進み、武士から庶民まで広く楽しまれるようになり、「変化朝顔」と言われるものが高値で取引される、朝顔ブームが起こりました。

花びらや葉に切れ込みが入ったもの、八重咲きのような花を咲かせるもの、また、現代では幻の色と言われる、黒や黄色の朝顔もあったと記録されています。品評会が行われ、木版の朝顔図譜が多数出版されたようです。残されている図譜を見てみると、写真のように精密に描写された美しい朝顔を見ることができます。花と葉の形や色が驚くようなものばかりで、これが江戸時代に作られていたのかと思うと、当時の人々がいかに熱狂していたかが想像できます。

子供たちが朝顔の観察記録をつけていたら、「昔の人々が作った、不思議な形の朝顔があるよ」と、江戸時代の朝顔ブームの話をしてあげるのもいいかもしれませんね。

日比谷花壇 シニアデザイナー 西澤真実子

 コラムニスト紹介

西澤 真実子
日比谷花壇 シニアデザイナー 西澤 真実子
ギフト商品デザインのコアを担うトップデザイナーのひとり。シンプルかつ花材の繊細な色合いにこだわったデザインを得意とする。また最近では、書籍やCDジャケット撮影の作品を手掛けるなど、活動の幅を広げている。