季節に合わせた花や緑の楽しみ方を紹介する、日比谷花壇の連載コラム「季節を彩る花物語」。
お家の中で花や緑を気軽に楽しむヒントを紹介したり、時には公園や路地裏に咲く花々を紹介してみたり、花や緑にまつわる歴史的な出来事から、海外での花の楽しみ方・贈り方まで、季節を感じ楽しめる花と緑の情報満載でお届けしていきます。
*このコラムは、中日新聞・東京新聞の隔週月曜夕刊で2009年1月から連載しています。
第102回 モカラ 〜暑さに強い 熱帯のラン〜
ハウス栽培されている切り花用のモカラ(マレーシア)
上品なコチョウラン、凛としたシンビジウム、華やかなカトレア。
「ラン」と言えば、気品高く、日常生活にはあまり馴染まない印象を受けますが、一口に「ラン」といっても、色も形も様々。世界には2万5千種以上ものランが存在しています。意外にも身近なところで、スイーツなどの甘い香り付けによく使われるバニラもラン科の植物です。バニラで香り付けされたカスタードクリームなどにみられる小さな黒い粒は、バニラの「種子」になります。
夏になるとフラワーショップに多く並ぶモカラ。これもまたラン科です。
モカラは主にタイやマレーシアなどの熱帯地域で栽培されています。燦々とふりそそぐ太陽の光をたっぷり浴びて育ったモカラは、赤・黄・ピンク・紫・オレンジなど元気溢れるビタミンカラーに開花します。色とりどりにいくつかの種類を合わせて飾れば、まるで南の島にいるかのような気分になります。
太陽の力がみなぎるモカラを観察すると、中心部が手前に突起していることに気がつきます。これは唇弁(リップ)と呼ばれていて、受粉する昆虫を誘引するためのもの。昆虫にとっては、花粉がここにあると主張する「旗」のようも思えるし、また着地を促してくれる「ソファー」のようにも見えてきます。
熱帯で育てられているモカラは、暑さに強く、花持ちが悩ましい夏にも心強い花材です。バラやガーベラなどに比べ、花弁が肉厚なので、水から離してもある程度水持ちします。そのためハワイなどビーチリゾートを訪れたときにもらうフラワーレイや、飲食店でフードやドリンクのデコレーションに使われていることも多々あります。さらに、肉厚な花弁は水にも強く、思い切って水をたっぷり入れた花瓶などにつけて、お花のアクアリウムのようにして楽しむのもひとつの手です。水をライトブルーなどに彩ってみても涼しさがいっそう増します。
厳しい暑さがしばらく続きますが、ラン科であるモカラを暮らしの彩りに、お楽しみください。
日比谷花壇 マーチャンダイジングディレクター 長谷川藍生
コラムニスト紹介
店頭での経験を活かし、日比谷花壇の首都圏店舗の生花マーチャンダイジングを担当。お客様が求める、またお客様に新たな発見や感動を提供する商品展開を手掛ける。