季節に合わせた花や緑の楽しみ方を紹介する、日比谷花壇の連載コラム「季節を彩る花物語」

季節に合わせた花や緑の楽しみ方を紹介する、日比谷花壇の連載コラム「季節を彩る花物語」。
お家の中で花や緑を気軽に楽しむヒントを紹介したり、時には公園や路地裏に咲く花々を紹介してみたり、花や緑にまつわる歴史的な出来事から、海外での花の楽しみ方・贈り方まで、季節を感じ楽しめる花と緑の情報満載でお届けしていきます。
*このコラムは、中日新聞・東京新聞の隔週月曜夕刊で2009年1月から連載しています。

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第97回 芍薬 〜花咲く姿つつましく〜

華やかさとその香りの豊かさで人気の「芍薬」

華やかさとその香りの豊かさで人気の「芍薬」

「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」
女性なら、一度は言われてみたいですね。

芍薬、牡丹、百合、どれも花姿・香りが優れていることで、古くから美人をあらわす言葉として用いられています。その昔中国で、芍薬は薬草として伝えられました。芍薬の効能は、婦人病、鎮痛、血液循環などに作用するそうです。

「花」そのものに魅力を感じるようになったのは、その後です。花びらを重ね膨らみ咲く美しさに、園芸家達が魅せられて、観賞用の栽培が始まりました。

色は赤、ピンク、白が主で、シンプルで上品な一重咲きや翁咲き、花弁の数が多く華やかな手まり咲きやバラ咲きのほか、牡丹との交配種などもあります。

芍薬が市場に出回る時期は、新緑が初々しい4〜6月。この季節を逃すと来年までお預けとなってしまいます。

一瞬の美しさを存分に楽しんでもらえるように、品質へのこだわりも強くなり、葉色、花色、蕾の大きさ・重さ、茎の長さ・真っ直ぐさなどに数多くの基準が設けられ、厳しい目で選別されたもののみが出荷されています。生産者さんの丁寧で愛情あふれる想いが感じられます。

このように、厳選された芍薬でも、中には咲かないものがまれにあります。これは蕾内から出る甘い蜜の仕業です。なかなか開かない蕾は、蜜を優しく水で洗い流してあげましょう。ベトついた蜜が緩み、開花しやすくなります。

ころっと小さな蕾が少しずつ咲く姿はとても慎ましく、開花後に一変して、香り豊かに見事に華やぐ姿は見るものを飽きさせない美しさです。そんな姿からか、芍薬の花言葉は「恥じらい」「はにかみ」「慎ましい」。

咲いた芍薬を眺めていると、つい見惚れてしまいそうで・・・立てば芍薬、座れば牡丹とは昔の人はよく言ったものです。春から初夏のあたたかい光をうけて開花する芍薬を、香りとともにお楽しみください。

日比谷花壇 マーチャンダイジングディレクター 長谷川藍生

 コラムニスト紹介

長谷川藍生
長谷川藍生
店頭での経験を活かし、日比谷花壇の首都圏店舗の生花マーチャンダイジングを担当。お客様が求める、またお客様に新たな発見や感動を提供する商品展開を手掛ける。