季節に合わせた花や緑の楽しみ方を紹介する、日比谷花壇の連載コラム「季節を彩る花物語」。
お家の中で花や緑を気軽に楽しむヒントを紹介したり、時には公園や路地裏に咲く花々を紹介してみたり、花や緑にまつわる歴史的な出来事から、海外での花の楽しみ方・贈り方まで、季節を感じ楽しめる花と緑の情報満載でお届けしていきます。
*このコラムは、中日新聞・東京新聞の隔週月曜夕刊で2009年1月から連載しています。
第96回 母の日 〜始まりには平和願う心〜
大輪のカーネーションを使った母の日フラワーギフト
5月の第2日曜日は「母の日」。今年の「母の日」は5月12日です。街のあちこちで、母の日のカタログや赤いカーネーションのディスプレイを見かけるようになります。そもそも、なぜ母の日にカーネーションが贈られるようになったのでしょう?それは、今から100年ほど前のアメリカにさかのぼります。
1908年5月10日、アメリカ、フィラデルフィアの教会で、アンナ・ジャービスさんという女性が亡き母を追悼するため、母が好きだった花、カーネーションで祭壇を飾り、出席者に配ったのが始まりと言われています。アンナさんの母は、南北戦争で負傷した南北双方の兵士を看病するなど、平和を願い、社会活動した人でした。その後もアンナさんは、平和を願う母親たちの社会改革への貢献を讃えて祝日にしようと運動を続けます。1914年、ウィルソン大統領が、5月の第2日曜日を「母の日」と制定し、国民の祝日としました。
カーネーションは、ナデシコ科の多年草、地中海沿岸が原産です。カーネーションほど花色豊かな花はないと思われるくらい、カラーバリエーションが豊富です。定番の赤やピンク、オレンジはもちろん、ブラウン系やラベンダー系などの微妙なニュアンスカラー、何色もミックスしたような複色系のものなど、時には主役で、時には脇役となってアレンジメントを魅力的に演出します。花が長持ちするのも特徴で、涼しいところに飾れば2週間ほど楽しむことができます。
ガーデニングで楽しむ場合は、日当たりの良い場所で管理しましょう。病気になりやすいので、咲き終わった花は、早く摘み取ることがポイントです。夏の暑さに弱いので、花が終わったら茎を半分くらいに刈り込み、風通しを良くしましょう。
聖母マリアが、十字架にかけられたキリストを見上げた時に、落とした涙から生まれたと言われるカーネーション。「母と子」「母性愛」を象徴する花と言われています。何気なく贈っているカーネーションですが、子が母を想い、母が平和を願う想いが込められていたのですね。
日比谷花壇 シニアデザイナー 西澤真実子
コラムニスト紹介
ギフト商品デザインのコアを担うトップデザイナーのひとり。シンプルかつ花材の繊細な色合いにこだわったデザインを得意とする。また最近では、書籍やCDジャケット撮影の作品を手掛けるなど、活動の幅を広げている。