季節に合わせた花や緑の楽しみ方を紹介する、日比谷花壇の連載コラム「季節を彩る花物語」。
お家の中で花や緑を気軽に楽しむヒントを紹介したり、時には公園や路地裏に咲く花々を紹介してみたり、花や緑にまつわる歴史的な出来事から、海外での花の楽しみ方・贈り方まで、季節を感じ楽しめる花と緑の情報満載でお届けしていきます。
*このコラムは、中日新聞・東京新聞の隔週月曜夕刊で2009年1月から連載しています。
第88回 チューリップ 〜寒さに耐え 美しさ長持ち〜
チューリップ「クリスマスドリーム」
吐く息が白くなる寒さの中で、浅緑の茎葉をキュッと引き締め、赤、白、黄など色とりどりの花を咲かせるチューリップ。新潟県では、分厚い雲が空を覆ってしまうような冬の寒い気候を逆手にとって、チューリップの栽培が盛んに行われています。また肥沃な大地と信濃川の豊かな水にも恵まれ、一般的な一重咲きから、複数の花弁が重なり合っている八重咲き、先のとがったユリ咲き、縁がギザギザしているフリンジ咲き、変わり咲きのパーロット咲きなど種類豊富に日本一の出荷量を誇っています。咲き方には好みがありますが、絶えず人気のある品種は、一重咲きがシンプルに可愛いピンクのクリスマスドリームやピンクダイヤモンドです。
新潟市でチューリップを生産する西脇農園さんは「色鮮やかで芯の引き締まったチューリップの生産には「根の成長」と「寒さ」が大切」と言います。
かの有名な唱歌の中で「赤、白、黄色」のみが歌われていますが、ピンク、紫、ミックスカラーなど、色数豊富な花です。いかに豊かな根を張らせるかがチューリップの発色を左右します。そのために、土よりやわらかく十分な水分を蓄えることができるピートモスを利用した土耕栽培や、水耕栽培によって栽培が進められています。
チューリップが咲くのは春。柔らかな日に照らされている微笑ましい姿は、寒さとは無縁のように思えますが、春に花が咲くということは、冬の肌を刺すような寒さの中、芽を吹くということ。そんな寒さの中で育つからこそ、芯の通った茎葉のチューリップに仕上がります。
厳しい寒さを耐え抜いたチューリップを少しでも長く楽しむにも「寒さ」が重要となります。人には肌寒く感じる玄関先や北側の部屋など、直射日光の当たらない場所で観賞すると1週間ほど花保ちします。暖かいとすぐに開花してしまい、花保ちも短いように感じられますが、チューリップは観賞中も開いては閉じ、開いては閉じながら、丈を伸ばす性質があります。採花後もなお成長するチューリップに、早春より生命のエネルギーを感じてみてはいかがでしょうか。
日比谷花壇 マーチャンダイジングディレクター 長谷川藍生
コラムニスト紹介
店頭での経験を活かし、日比谷花壇の首都圏店舗の生花マーチャンダイジングを担当。お客様が求める、またお客様に新たな発見や感動を提供する商品展開を手掛ける。