連載コラム「季節を彩る花物語」

季節に合わせた花や緑の楽しみ方を紹介する、日比谷花壇の連載コラム「季節を彩る花物語」。
お家の中で花や緑を気軽に楽しむヒントを紹介したり、時には公園や路地裏に咲く花々を紹介してみたり、花や緑にまつわる歴史的な出来事から、海外での花の楽しみ方・贈り方まで、季節を感じ楽しめる花と緑の情報満載でお届けしていきます。
*このコラムは、中日新聞・東京新聞の隔週月曜夕刊で2009年1月から連載しています。

バックナンバー

 第53回  メリア  〜花びらや葉を重ね合わせて〜

バラの花びらを何枚も重ね合わせて作った、バラメリアのブーケ

バラの花びらを何枚も重ね合わせて作った、バラメリアのブーケ

「ウエディングブーケ」と聞いて一番に思い浮かぶお花はどんなお花でしょうか。

ユリやバラは一般的にもよく知られており、その1輪の姿の美しさから長年にわたって花嫁を引き立てる存在として愛され続けています。そのあしらい方はその時代に応じて色々な工夫がなされています。

「メリア」と言う言葉を耳にしたことがある方もいらっしゃると思いますが、「メリア」とは、椿(camellia)からきたもので、八重椿のように幾重にも花びらや葉を重ねて大輪の花を作ることを意味します。例えばバラの場合ですと、中心は1輪のバラですが、それにたくさんの花びらを加え、大きな花にしていきます。それを「バラメリア」と言い、ユリで作った場合は「ユリメリア」となります。お花は手法一つでその特徴を生かしながら、新たな魅力を引き出すことができ、そこがとても奥深く、興味が尽きないところでもあります。

お花自体の形や色も変化を遂げ、バラの中でも特にブーケのお花として人気が高いものが「カップ咲き」と言われるものです。ころんと丸いシルエットと丸い花びら、そしてふんわりとした咲き方が何とも愛らしく、華やかさとやわらかさを兼ね備えています。そんなバラを束ねて大きなリボンをあしらったブーケは可愛らしいデザインのドレスにぴったりです。またお花の色も「赤・黄色・ピンク」のようにはっきりと識別できるような色合いだけで無く「ピーチ色・ミルクティー色」など何とも言えない、あえて言うならば「ニュアンスカラー」と呼ばれる色目のお花が非常に多く市場に出回るようになり、ドレスに彩りを添えています。すずらんのようにお花がとても小さく控えめな雰囲気のお花も、同じお花をたくさんあしらうことで印象的なブーケに仕上げることができます。

このようにお花のあしらい方、形、色、雰囲気など、様々な要素が組み合わさってたった一つのブーケが作られると考えると、さらに夢が広がりますよね。


 コラムニスト紹介

杉本郁弥
日比谷花壇 ウエディングフラワーコーディネーター 食空間コーディネーター
都内ホテルにて、ウェディングブーケのデザイン・空間装飾&テーブルコーディネートを担当。また、ホテル婚礼パンフレットの制作に携わる。10年間で1,000組を超えるお客様のウェディングフラワーをコーディネートする。