連載コラム「季節を彩る花物語」

季節に合わせた花や緑の楽しみ方を紹介する、日比谷花壇の連載コラム「季節を彩る花物語」。
お家の中で花や緑を気軽に楽しむヒントを紹介したり、時には公園や路地裏に咲く花々を紹介してみたり、花や緑にまつわる歴史的な出来事から、海外での花の楽しみ方・贈り方まで、季節を感じ楽しめる花と緑の情報満載でお届けしていきます。
*このコラムは、中日新聞・東京新聞の隔週月曜夕刊で2009年1月から連載しています。

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 第41回  花と弔いの歴史  〜生命の象徴としての花〜

故人に手向けられる矢車菊やマーガレット

故人に手向けられる矢車菊やマーガレット

秋は花を愛でる方々にとってはとても大切な季節。そうです、来年に咲かせる花々の種を蒔くのです。アイリス、チューリップ、アネモネ、パンジーやビオラ、矢車菊など、秋植えの花々は生命が誕生し、勢いづく春にその美しい姿で私たちを楽しませてくれます。

ところで、矢車菊といえば、ツタンカーメン王と矢車菊の話をご存知でしょうか。エジプトの陵墓に眠っていた少年王ツタンカーメンの棺から、矢車菊やオリーブ、蓮などからなるブーケや花輪のようなものが多数発見されたのだというのです。何千年も前の人々が現代と同じように死者に花を手向けていたのはなんとも不思議な気がしますが、古代エジプトでは死者に花を手向けるのはごくごく一般的な風習であったようです。

このツタンカーメン王の例をみてもわかりますが、実は花とお弔いの関係には意外と長い歴史があるのです。古いところではこんな話があります。四万年以上前のネアンデルタール人たちの共同墓地跡から花粉が発見され、それは原始の人間が死者に花を手向けていたのではないかという話です。

また、古の日本においても、花を死者のために祀ったとされる話があります。「日本書紀」のなかの一話。イザナミノミコトが火の神を産んだときにその火に焼かれて死んでしまいます。イザナミノミコトは葬られ、その土地に住む人々はイザナミノミコトの魂を祀るために花が咲く季節には花を捧げ、幟旗を立て、笛や太鼓の楽の音とともに舞い踊ったというのです。洋の東西古今を問わず、死者に花を手向けるという行為は人々にとってとても自然なことであったのでしょう。

では、なぜ古来より人々は死者に花を手向けてきたのでしょうか。これには様々な意見がありますが、花や草木の持つ強靭な生命力が、生命の象徴とされたのだろうという説が最も一般的なようです。死者に花を手向けることで人々は新しい生命や再生を願ったのかもしれません。


 コラムニスト紹介

鈴木健久
日比谷花壇 フューネラルプロデューサー
「人と人とのつながりや想いを形にしたい」と日比谷花壇の葬儀サービス「フラワリーフューネラル」に携わる。店頭でのフラワーコーディネートをはじめとして、法人営業や装飾事業など多岐にわたる経験を活かし、葬儀シーンで活躍。今までの葬儀には見られない斬新な祭壇デザインや店舗で培ったお客様へのおもてなしで、日比谷花壇ならではの新たな葬儀を提供している。