季節に合わせた花や緑の楽しみ方を紹介する、日比谷花壇の連載コラム「季節を彩る花物語」。
お家の中で花や緑を気軽に楽しむヒントを紹介したり、時には公園や路地裏に咲く花々を紹介してみたり、花や緑にまつわる歴史的な出来事から、海外での花の楽しみ方・贈り方まで、季節を感じ楽しめる花と緑の情報満載でお届けしていきます。
*このコラムは、中日新聞・東京新聞の隔週月曜夕刊で2009年1月から連載しています。
【特別号】 被災地の巨木 〜今度は私たちが救う番〜
「春が過ぎ、夏になっても、葉が出ない。」
当社にそんな相談をいただいたのは、今年7月初めのことでした。
名取市杉ヶ袋地区の民有地にあるその木は、高さ約12メートル、推定樹齢100年以上の白樫の巨木。“明神の木”として親しまれていた木です。
白樫は、どんぐりの木としても親しまれている常緑樹。落葉しないはずの白樫の木の葉がほぼ落葉し、夏になっても葉が出ず、あたかも枯れてしまったかのような状態に陥っていました。
名取市杉ヶ袋地区は、東日本大震災で津波に襲われ、家が壊れ、ビニールハウスや田畑が水に1週間ほど浸かってしまった地域です。木が枯れて死んでしまっているのだとすると、木も切り倒すしかないため、この木が生きているのであればなんとか残したいというのが、この木がある土地の所有者のご家族の思いでもありました。
私たち日比谷花壇のグループ会社で、樹木の診断治療を行う“緑の総合病院”の樹木医が、現地に向かったのは8月下旬。木の周囲を掘って土や根を調べ、いくつか枝を採って木の診察を行いました。その結果、海水による塩害が認められ、細根の5割以上が壊死し、木の根元の樹皮も周囲5割程度の範囲で壊死しているという、極めて危険な生育状態と診断されました。ただ幹はほぼ健全で、地下の大径根は生育している可能性が高いため、保護対策が急務とされました。そのため9月末には、第一回の治療として、幹の保護(幹巻)や、枯死した枝の選定、木の周りの固まった土を掘り、空気を入れるなどの治療を行いましたが、葉を芽吹かせるためには、春にまた治療を行う必要があります。
津波に襲われながらも残った岩手県陸前高田市の「高田松原」の一本松も、それまで300年以上の間、塩害を防いでくれていました。また、木は、土砂崩れや洪水を防いだり、豊かな森として自然の恵みを与えてくれたりと、私たちの生活を守ってくれています。日比谷花壇では、震災で被害を受けた白樫の木を救うために、日比谷花壇のホームページやお店から皆さんも参加いただけるプロジェクトも展開しています。木と共生してきた私たち。今度は、私たちが木を救って恩返しをする番ではないでしょうか。
株式会社日比谷花壇 広報室 横井理恵