季節に合わせた花や緑の楽しみ方を紹介する、日比谷花壇の連載コラム「季節を彩る花物語」。
お家の中で花や緑を気軽に楽しむヒントを紹介したり、時には公園や路地裏に咲く花々を紹介してみたり、花や緑にまつわる歴史的な出来事から、海外での花の楽しみ方・贈り方まで、季節を感じ楽しめる花と緑の情報満載でお届けしていきます。
*このコラムは、中日新聞・東京新聞の隔週月曜夕刊で2009年1月から連載しています。
第45回 直葬 〜悼む気持ちに花を添えて〜
人の「死」にお花が添えられるようになって以来、お花とご葬儀はとても親密な関係にあります。それは連綿と続く人類の歴史の中で、忘れ去られることなく現代にまでその姿を残しています。
もちろん、依るべき宗教やその時代時代によってお花とご葬儀の関係はその姿を変えてきました。しかし、その根本にある、死者を悼むという気持ちはいくら時代が移り変わっても変わることのないものだと思います。
お花とご葬儀の関係は、近年になると、花祭壇や供花、献花という形で「死」に添えられるようになりました。
ところが最近、花祭壇などを必要としない「直(ちょく)葬(そう)」と呼ばれるご葬儀のスタイルが注目され始めました。これは通夜や告別式というようなセレモニーを行わず、故人を直接火葬場へお連れし、荼毘に付してしまうという葬儀形式です。もともと、この「直葬」は、ご葬儀をあげたいのだけれども経済的な理由でご葬儀をあげることができない方々や、身寄りの無い方、または、ご葬儀に参列される方が少数しかいないときなどに利用されていました。
現代でももちろん前述のような理由をお持ちの方々もいらっしゃいますが、それよりも、ご葬儀に宗教的な意味合いを持たせたくない方や、大勢の皆様にご会葬していただくことが申し訳ないと思う方、また、残される身内に経済的な負担をかけたくないという方が「直葬」を選ばれることが多いようです。
このようにその意味合いを少しずつ変化させてきた「直葬」では、花祭壇こそ設けないものの、従来の「直葬」とは違い、お花を利用することはごく当たり前のこととなっています。例えば、お棺の中に眠る故人のお体の周りにたくさんのお花を飾ってさしあげたり、お棺の御蓋の上にアレンジメントや花束などを供えたりなどします。
「直葬」という簡易な葬儀形式については賛否両論ありますが、今後もこの葬儀形式を選ばれる方は増えていくことと思われます。けれどもそこには、故人を悼む気持ちとお花が変わることなく添えられ続けることでしょう。
コラムニスト紹介
「人と人とのつながりや想いを形にしたい」と日比谷花壇の葬儀サービス「フラワリーフューネラル」に携わる。店頭でのフラワーコーディネートをはじめとして、法人営業や装飾事業など多岐にわたる経験を活かし、葬儀シーンで活躍。今までの葬儀には見られない斬新な祭壇デザインや店舗で培ったお客様へのおもてなしで、日比谷花壇ならではの新たな葬儀を提供している。