連載コラム「季節を彩る花物語」

季節に合わせた花や緑の楽しみ方を紹介する、日比谷花壇の連載コラム「季節を彩る花物語」。
お家の中で花や緑を気軽に楽しむヒントを紹介したり、時には公園や路地裏に咲く花々を紹介してみたり、花や緑にまつわる歴史的な出来事から、海外での花の楽しみ方・贈り方まで、季節を感じ楽しめる花と緑の情報満載でお届けしていきます。
*このコラムは、中日新聞・東京新聞の隔週月曜夕刊で2009年1月から連載しています。

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 第43回  花祭壇  〜ナチュラルな印象で人気〜

多様化する、生花でつくる祭壇

多様化する、生花でつくる祭壇

葬儀式場に一歩足を踏み入れると、とても良い香りがすることがあります。式場内に設けられた花祭壇に使われている、たくさんの花々から香ってきているのですね。花は、故人との別れのシーンにも使われています。

従来の葬儀では、白木の祭壇を用いることが当たり前でした。そして、花々はその白木祭壇の脇に添えられるように飾られていました。あくまでも花は脇役といったところでしょうか。それが、近年では重厚な雰囲気のある白木祭壇よりも、明るく優しいイメージの花祭壇が好まれ、利用されることが多くなってきました。花祭壇は近年、葬儀祭壇の主流となりつつあります。一般的に、花祭壇は白木祭壇に比べるとナチュラルなイメージが強いですが、それが花祭壇を主流にさせた主な要因なのではないかと思います。

白木の祭壇もそれほど古い歴史のあるものではなく、第二次大戦後から葬儀の主流になったと言われています。それに対して花祭壇は1967年、吉田茂元首相の国葬が営まれたときに利用されたのが、わが国での初めての花祭壇と言われています。

花祭壇はとてもデザイン的なものが多くなり、使用される花々の色も種類も多様化しています。菊やユリだけでなく、バラやトルコキキョウ、ラン、ダリア、ヒマワリ等も使われます。今ではおなじみとなった菊を等間隔に並べて作る祭壇から、お棺を囲むようにお花を並べた花祭壇、著名な華道家がデザインしたものや南国の花々をあしらった祭壇など、葬儀の数だけ花祭壇の種類があるといっても過言ではありません。

一部、仏教葬儀では棘のあるバラなどは使用してはならないと言われておりますが、どのような花であれ、亡き人への思いのこもったものであればあまり細かなことは気にしなくとも良いのではないでしょうか。故人がとてもバラを愛していた方であれば、やはり霊前にはバラを供えてあげたいですよね。

四季のある国に住み、季節の移ろいを大切にする日本人は、特に自然を好む傾向があります。自然の花々を使用した花祭壇が全国に広まり、受け入れられたのはとても自然なことだったのかもしれません。


 コラムニスト紹介

鈴木健久
日比谷花壇 フューネラルプロデューサー
「人と人とのつながりや想いを形にしたい」と日比谷花壇の葬儀サービス「フラワリーフューネラル」に携わる。店頭でのフラワーコーディネートをはじめとして、法人営業や装飾事業など多岐にわたる経験を活かし、葬儀シーンで活躍。今までの葬儀には見られない斬新な祭壇デザインや店舗で培ったお客様へのおもてなしで、日比谷花壇ならではの新たな葬儀を提供している。